こんにちは。サステナブル・ラボ CEOの平瀬です。
前回のブログ更新から少し日が空いてしまいましたが、2022年末は、シンガポールとシリコンバレーに行きました。いずれも僭越ながら日本代表枠でご招待をいただいたカンファレンスへ出席するための出張です。(本年もさまざまな国へ赴く予定ですので、我々の活動に乞うご期待ください!)
シンガポールはFintech系、シリコンバレーはベンチャーのアクセラレーター主催のもので、それぞれでサステナブル・ラボの事業についてプレゼンさせていただきました。
両国への出張を通して、改めて世界レベルでのESG化のすさまじい勢いを肌身をもって感じました。業界・業種など関係なく全てのセクターが、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向かっており、地球規模での変革期にある。社会変革を本当に起こせるのかどうかを試されている時代の渦中にいるのだということを、日本で感じる5倍、いえ、10倍の勢いで感じてきました。我々サステナブル・ラボが目指す社会の姿や提供しているサービスは、今の世の中に必要とされるものであるということを改めて確信し、たくさんの活力を得ることができました。
さて、出張を通してESG時代到来のダイナミズムにふれたこともあり、今回は創業当時から現在に至るまでの時代の流れや、それをふまえて進化してきた我々のビジネスモデルを振り返りながら、サステナブル・ラボのこれまでとこれからについて書いてみたいと思います。
サステナブル・ラボの創業は2018年の終盤です。2018年というと、皆さんはどのようなことを思い出しますか?今は遠い昔のように感じますが、新型コロナウイルス発生前で、まだマスクなしに生活していた年ですね。明るいニュースとしては、平昌五輪で日本が冬季最多の13メダルを獲得しました。とくに2連覇を果たした羽生結弦選手の活躍は素晴らしいものでした。一方で、西日本豪雨や北海道での震度7の地震など、自然災害も多くあった年でもありました。
ESGの観点ではどうでしょうか。SDGsが2015年に国連サミットで採択されて以来、SDGsやESGなどのワードが少しずつ世の中に普及しており、広く一般にも認知され始めた時期だったと思います。一部の企業がサステナビリティへの取り組みやその打ち出しを強化し始めました。ここから2020年頃までは、ESG1.0の時代。標語としてサステナビリティをかかげ、標榜する意欲を見せたり宣言を出したりする企業が増えた時代です。
このような世の中の動きに対し、私はポジティブな思いと同程度に実はネガティブな思いをかかえていました。口のうまい企業・見せ方のうまい企業が勝つ時代になってしまうことを危惧して、もやもやしていました。見せ方の材料としてサステナビリティが使われてしまうのではないか、と。(昨今実際にグリーンウォッシュやESGウォッシュなどのワードを耳にしますね…。)
これまでのブログでもふれたように、私は学生時代に環境起業家として活動を開始して以来、様々な経験をし、光と闇を多く見てきました。高尚な環境起業家・社会起業家との出会いが増え、純粋に尊敬し、「こういう人が世の中をよくするんだ」と信じてきた一方で、高尚さ・優しさだけではやっていけないと思い知らされる場面にも多々遭遇しました。自分自身もその壁に何度もぶつかり、「優しさ」に加え、お金を儲けるビジネスモデルを作る、などの「強さ」が必要だと思い至っています。
このような背景から、強い人だけが勝つのでなく、優しさを兼ね備えた人が照らされてほしいという憤りにも似た想いをかかえていた私は、このままではサステナビリティも、強い人たちのおもちゃにされてしまうと思ったんです。
この想いが、サステナブル・ラボの創業につながっています。
企業が一人称で「良い」と打ち出すことだけを全てとするのではなく、第三者的な立ち位置で、企業の「良い」を可視化する仕組みを作る。そうすれば、口下手で光が当たっていないけれど本当は良い企業や良い商品・サービスにも光を与えることができます。結果、世の中のお金の流れを変え、世の中そのものを強く優しくしていくことができると同時に、シール貼り合戦のような不本意な形ではなくより本質的な「良い」を増やすこともできると考えました。
さて、少し話が変わりますが、経済活動には大きく下記3つの判断主体が存在します。
①金融機関
②事業会社
③消費者(生活者)
それぞれに、投資・融資をしたり、商品・サービスを提供したり、購買・就職したり、と、あらゆる判断をしながらこの社会を形作っています。
サステナブル・ラボ創業当時は、実はこのうち③生活者向けのサービス提供からスタートしました。
生活者が何かを購入するときの判断軸に、機能や価格に加え、人や社会や地球にとってどのくらい良いのか、という視点を加える。そのためのデータを見える化し提供することで、生活者の判断をグリーン化していくことを考えていました。そうすれば、良い商品・サービスが選ばれ、結果、生活者を顧客とする事業会社もグリーン化していく。生活者の判断が変われば、ほかの主体にも影響が波及していくと見込んでいました。
ところが、試行錯誤しながら事業を進め、多くの投資家や事業会社等とも議論を重ねた結果、残念ながらこのアプローチでは難しいということが見えてきました。生活者には大きなポテンシャルはあるものの、判断要素としてグリーンな視点が本質的に入ってくるには少し時間がかかることが想定されました。
例えば、地球に優しいシャンプーと普通のシャンプーがあった場合、地球に優しい方が良いという点については総論「Yes」です。一方で、それがそのまま「購入する」行為には至りません。私が環境起業家をしていたときから感じている、「応援はすれど支援をするには至らない」という状態が顕著でした。
但しこれも、生活者が悪いという話ではありません。時代として、生活者のニーズが顕在化していなかったのです。
対して、顕在化が明らかに早かったのは、①金融機関でした。我々はあくまでスタートアップであり、最小の労力で最大の結果を創出する責任があります。これらをふまえ、時間軸の観点から、まずはニーズが顕在化している金融機関の判断をグリーン化する仕組みを作ろうと、戦略を変えました。2019年夏頃の話です。これが、今提供している非財務データバンク「TERRAST(テラスト)β」の始まりです。
当時、ニーズの顕在化はあったものの、金融機関のなかでも、何がグリーンで何がそうでないのか、ESGをどう評価するのかはまだ定まっておらず、やわらかい状態にありました。そのため、データを集めて可視化するだけではなく、あらゆるメソドロジーを搭載する必要があると考えました。かねてよりお伝えしているとおり、ESGに唯一無二の正解は存在しません。だからこそ、ひとつの正解を提示し押し付けるのではなく、あらゆる判断を支援する仕組みとして、様々なデータとメソドロジーを提供するというコンセプトで「TERRAST β」を作ることにしました。
こうして金融機関向けにシフトして以降、全力でアクセルを踏み、プロダクトを進化させ、金融機関の方々にも広くお客様になっていただくことができました。ちょうど時代の流れとしても、2021年頃からESG2.0へと進化し、標語としてのESGから、中身が問われるESGの時代にシフトしていったように思います。この時代の流れは、サステナブル・ラボにとっても大きな追い風となりました。
そして2022年、我々は次のステップとして、②事業会社へのアプローチを始めました。時代の流れもあり、事業会社においてもESG/SDGs経営が世の中から求められるなか、事業会社自身があらゆる非財務データを管理・分析し経営判断に活用していく必要が出てきました。それを実現するためのデータバンク「TERRAST for Enterprise β」の誕生です。①金融機関に次いで、②事業会社の判断をグリーン化していく仕組みづくりを開始した形となりました。
「TERRAST for Enterprise β」は、データを見たい金融機関と、データを集めて見せたい事業会社をつなぐパイプラインの役割も担っています。これがより普及し、社会インフラになれば、ESGにかかる情報コストが限りなくゼロに近づき、あらゆる投資判断にESGが取り込まれるようになると考えています。
そしてさらにその先、時代は2025年頃からESG3.0へシフトしていくと考えられます。投資判断にとどまらず、川上から川下まで、例えば資源の調達から破棄・リサイクルに至るまで、すべてがESG化していくことが見込まれます。今よりも広いバリューチェーンのあらゆるポイントでデータが可視化され、よりデータドリブンなESGを実現していく時代です。我々もデータのプラットフォーマーとして、今後ますます進化を続けなければなりません。
もう一点、サステナブル・ラボとしては、③生活者へのアプローチという再挑戦も見据えています。①金融機関、②事業会社に加えて、③生活者もつなぐパイプラインができれば、3つの判断主体全てにおいて、あらゆる判断に何かしらの形でESGが組み込まれ、本当の意味ですべてがESG化していきます。結果、世の中がより優しくなるはずです。
③生活者へのアプローチから始まったサステナブル・ラボは、創業当時からビジョン・ミッションを貫きつつも、時代の流れに応じてビジネスモデルを変えながら歩んできました。これからも、すべてがESG化するより優しい社会という未来を見据え、時代の流れを先取りしながら挑戦を続けていきます…!
今回もお読みいただきありがとうございました!