こんにちは。サステナブル・ラボ CEOの平瀬です。
2023年3月末、サステナブル・ラボは「サステナビリティデータ・評価標準化機構(仮称)」設立に向けた準備をスタートしました。また、3月28日には金融庁とNIKKEIが共催するFINSUM 2023で本構想を講演する機会にも恵まれ、多くの反響を頂くことができました。
参考リンク「サステナビリティデータ・評価標準化機構(仮称)」設立に向けた活動の開始|サステナブル・ラボ株式会社のプレスリリース
当機構は、「あらゆる意思決定がサステナビリティに基づいて行われる未来を創る」をミッションに掲げ、サステナビリティデータと価値評価の尺度・定義を標準化し、上場企業や大手企業のみならず、中堅・中小企業や非上場企業にもサステナビリティデータを浸透・促進する活動を展開していきます。
すでにメガバンクをはじめとする金融業界、関係省庁、中小企業関連団体、ESG関連企業・団体、ベンダー等と協議を行っており、設立趣旨への賛同をいただいています。今後コンソーシアムを設立し、賛同会員を募る予定です。
今回はこの新たな活動に対する想いや機構設立の背景についてお話したいと思います。
目次
- 日本のサステナビリティはポテンシャルに満ちている
- 日本経済はずっと機会損失しているのではないか
- 中堅・中小企業を含めた日本企業の「よい部分」をもっと見つけやすく
- サステナビリティ情報をなめらかに流通させる
- よい企業を照らし、世界へ届けるために
日本のサステナビリティはポテンシャルに満ちている
「日本企業のサステナビリティは海外に比べて遅れをとっている」と言われることがありますが、私は決してそうではないと思っています。
たとえば昭和時代から続く人的資本経営やもっと古い「三方よし」の精神に基づく商いの考え方などは、ESGという概念が生まれるずっと前から日本の経営者たちが想いを持って実行してきたことです。
また日本の環境関連技術などは世界をリードでき得る分野であり、大企業・中堅・中小企業問わず優れたものを持っていることが、各種レポートでも示されています。
日本経済はずっと機会損失しているのではないか
堂々と誇りを持って日本企業が世界にアピールできるものがあるにもかかわらず、そこに光が当たりにくいために、日本経済は気づかぬうちに何十年も機会損失をしている可能性があると思います。
ヒト・モノ・カネに選ばれ続けなければ企業は存続・繁栄できませんが、なんとか選ばれようとするあまり、タコが自分の手足を食べるようなことをしている気がするのです。たとえば、目の前の利益やお客様が離れてしまわないよう無理なディスカウントをして、そのしわ寄せで従業員やサプライチェーンの労働慣行などに影響を与え、結果的に人的資本経営・健康経営と真逆の方向に向かってしまう。
極端な例ですが、自分の未来を食べて生きているのと同じようなことが日本経済のあらゆる領域で起こっているように思えます。
もっと長期目線あるいは本質を見つめ、世の中、従業員、顧客の未来を描いて、そのビジョンに共感してくれるステークホルダー(ヒト・モノ・カネ)に選ばれ続けることが、長期的に企業が生存・成長・繁栄していくためのひとつの道だとすると、今はそれが非常に見えづらいんだと思います。「一億総近視眼」とでも言いましょうか。
中堅・中小企業を含めた日本企業の「よい部分」をもっと見つけやすく
このようにESGの文脈で多くのよい部分を保有しているのに、それらが見える化されていないというのが日本企業の現状です。この見えていない「よい部分」をESGの文脈に載せることができれば、日本経済の未来に光明があるのではないかと思うのです。そのためにもサステナビリティ情報の開示・評価の標準化を進める必要があります。
しかし現在進行中のサステナビリティ情報の開示・評価の標準化の動きは、おもに大企業が対象で、中堅・中小企業は取り残されがちです。
大企業と中小・中堅企業の間でサステナビリティ情報開示のギャップが広がるという課題は、よく考えると大企業の課題でもあります。なぜならサプライチェーン全体でESGを改善していきましょうという流れの中で、中堅・中小企業が取り残されている状態はサプライヤーがカバーされていないとこいうことであり、大企業のサプライチェーンを通じたサステナビリティ経営が進まないことに繋がるからです。
日本の産業構造は99%が中堅・中小企業で日本経済を支えています。そのため中堅・中小企業にフィットしないサステナビリティ情報開示・評価の標準化が進むと、日本経済にとって大きな機会損失が起きてしまうと捉えることもできます。
サステナビリティ情報をなめらかに流通させる
あらゆる領域にサステナビリティ情報を流通させることができれば、すべての経済活動がSX(サステナビリティ・トランスフォーム)するのではないかというのが我々の仮説です。
投融資判断から経営判断、あるいは生活者の消費行動の判断、就職・転職活動時の企業選びに至るまで、様々な判断を下す際にそれがサステナブルであるのかという軸が織り込まれる、そんな社会の到来は近いと思っています。
その時代を迎えるために何が必要か?というと、先回りしてサステナビリティ情報の流通をなめらかにするために、オールジャパンで「サステナビリティデータと評価尺度の標準化」をやっていきましょうというのが、我々が掲げるビジョンです。
よい企業を照らし、世界へ届けるために
このビジョンの実現は我々1社だけでは達成できません。
「早く行きたいなら一人で。遠くへ行くならみんなで。」という言葉がありますが、まさにこれはひとつの企業やひとつの金融機関がそれぞれ独走して早く為そうとすると、その競争の結果として生まれるバラバラの基準は、致命的に社会利益を失う領域だと思うのです。そうではなく、産官学金が一体となって「みんなでやる」ことで社会の共通財産が生まれるはずで、その先に健全な競争・協創領域があるのだと。
ただ、みんなでやっていこうとなると、侃々諤々とした議論になりやすい面もあるので、リーダーシップを持っていかに「しなやかに行う」かが重要です。
サステナビリティデータと評価の標準化が進んでいくと、サステナビリティ情報(ESGデータ)の海が出現します。
生まれたデータの海は日本経済の失われた機会を取り戻し、企業とステークホルダーの新たな対話機会を創りだすでしょう。そしてお客様、従業員、金融機関などのステークホルダーから共感を持って選ばれる企業になることに貢献していくと考えています。
今後はオールジャパンでの「サステナビリティデータ・評価標準化機構(仮称)」設立に向けて、以下のスケジュール感で活動を予定しています。
- 2023年6月末:機構設立、活動開始
- 2024年1月末:「情報の定義」「評価の尺度」(中堅・中小企業向けVer.1)リリース
当機構の趣旨にご賛同いただける企業・団体・金融機関の方はお問い合わせください。
サステナビリティデータの標準化を加速させ、広いデータの海をつくり、良い企業を照らしていきましょう!そのさきに、共感とエビデンスで支えられた新たな社会があるはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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