みなさま、こんにちは。サステナブル・ラボのPRチームです。今回は2022年6月に開催したウェビナーのサマリー後編をお届けします。
後編となる今回の記事は、サステナブル・ラボ株式会社CEO平瀬錬司による「当社が考えるESG2.0時代の社会的リターン」講演のレポートです。
平瀬 錬司
サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO
大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を経験。京都大学ESG研究会講師。非財務ビッグデータに関する執筆・講演多数。
サステナブル・ラボが見据えるESG2.0とは
サステナブル・ラボの代表として数々の投資家、研究者、金融機関、事業会社などの声を聞きながら非財務データサイエンスの分野の最前線を走り続ける平瀬。そんな平瀬の目に「ESG2.0」の世界はどう映っているのか?ウェビナー後半で参加者の皆さんに共有しました。
まずはサステナブル・ラボという企業がどんな立ち位置なのかをおさらい。
- 非財務データサイエンスに特化した専門ファーム
- 研究開発型のベンチャー企業
- 事業の柱① ESG/SDGs領域におけるデータサイエンスを活用した「各種研究・モデル開発事業」
- 事業の柱② 研究開発で得られた成果やデータ蓄積を活用したESG投資/意思決定のためのデータベンディング、SaaSを提供する「データベンダー/SaaS事業」
- 大手金融機関、コンサルティングファーム、事業会社、官公庁等と取引実績有
ESG2.0時代はリスク軽減から社会的リターン追求へ
「加藤先生からESG投資が第2フェーズに入ったとお話いただいたように、世間でもESG2.0という言葉が出てきています。考え方を整理するためにこの概念を借りてお話すると、いわゆるESG投資1.0はまずリスクを低減していこうという考えでした。ESG投資2.0はさらに深化し社会的リターンを追求しようとしており、より本質に迫ろうとしています」と語る平瀬。
「ESG投資1.0が “守りのサステナビリティ投資“ だとすれば、ESG投資2.0は “攻めのサステナビリティ投資” と表現できるのではないか」と提言される平瀬は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの軸の観点の変化について以下のように解説します。
E軸(Environmental、環境軸)のアップデート
- ESG1. 0のE軸は、リスク低減寄りの観点で、地球全体を覆う気候変動という巨大な事象を意識して適切にリスクマネージしているかを見る姿勢。
- 最近は「自然資本経営」という概念でリスク低減だけでなく、機会をどう追求していくかという方向に前進。
- ESG2.0的な自然資本経営では、商品・サービス・サプライチェーンのグリーン化、サーキュラーエコノミーの推進、クライメイトテックを含めたクリーンテクノロジーの開発、環境融資などが機会としてあげられる。TNFDへの対応もそのうちの一つ。
S軸(Social、社会軸)のアップデート
- ESG1.0のS軸は、人的資本管理や地域社会貢献活動などがリスク低減寄りの観点で見られがちであった。
- ESG2.0のS軸では、社会資本や健康資本、人的資本などを価値の源泉としてどうクリエイトしていくのかという点が注視される。
- どのように取り組み、どういう目線で、どのような経営資源の投資がなされているのか、それらがどう運用されているのかといった「実」の部分が見られるようになると思われる。
G軸(Governance、ガバナンス軸)のアップデート
- ESG1.0 のG軸は、取締役会や腐敗防止に関し適切なリスク管理がされているかに重点が置かれていた。
- ESG2.0のG軸は、長期にわたり価値創造しつづけられる体制がとられているのか、組織の土台部分はどのような思想に基づいているのか、どこまで将来の絵を描いて事業運営されているのか、などのポイントが見られるようになっていくと思われる。
- 企業風土などは重要とされつつも定性的で測定方法が難しい点もあるが、本質はどんな価値をどうやって創造しているのか?という目線に引き上がっていると考えている。
このようなESGそれぞれの軸の観点のアップデートをふまえ、平瀬はこの変化の先を次のように読み取っています。「単純にデータポイントを増やすのではなく、意味のあるデータを探し見ていこうという流れが生まれています。どんな価値を、どうやって創造しているのか?あるいは創造しようとしているのか?といった価値に紐づけた本質がより求められていくと思います」。
ESG2.0に向けた考え方
ESG1.0からESG2.0への進化・高度化に向けたサステナブル・ラボの基本的な心持ちは以下の2つ。
- 社会的リターンの定義は本来、千差万別(パーパスによる)
- 多面的に評価・説明・理解するため「データの海」と「プラクティス」がもっと必要
この2つの基本的な考え方とる理由について、平瀬は次のように説明します。「投資家であれ事業会社であれ、その存在理由(パーパス)によって社会リターンの定義は異なります。なので唯一の社会的リターンというものは原理上、存在しないと考えます。しかしながら社会的リターンの定義は異なるものだとした場合、相当カオスな状態になってしまいます。ですから説明責任のなかで社会的リターンを多面的に評価・説明・理解することが非常に重要です。そのためにデータの海とプラクティスがもっと必要である、というのがサステナブル・ラボの基本的な考えです」。
サステナブル・ラボから皆さまへ
ウェビナーの最後には、平瀬から参加された方々に向けて「3つの投げかけ」という形で相談とお願いをしました。
1.データの海の「広さ」を知るために
- ESGを多面的に見ていくためにはデータの海がより重要となる。
- サステナブル・ラボはデータの海の「広さ」について様々なステークホルダーのみなさまと対話したいと考えている。
- 企業の氷山の下に存在する非財務的な部分を見ていくために、サイズ、粒度、質、鮮度など、どんなデータが必要なのか、どのようなデータがあれば有用でうれしいのかなどを是非お聞かせいただきたい。
2.データの海からプラクティスを増やし「何が重要か?」を知るために
- データの海で溺れてしまわないように、データの海からプラクティスを増やし、本質的に「何が重要なのか?」を知ることも必要。
- 現在もサステナブル・ラボは官公庁様、金融ファーム様、コンサルティングファーム様と共同で様々な研究を行っているが、今後さらにプラクティスを増やすため、また各企業様のフィロソフィーやパーパスに沿った評価モデルや、マクロ経済指標と個別企業のESG指標を組み合わせた際にどんなモデルが導出されうるのかなどを知るために、共同研究のお願いをさせていただきたい。
- 随時、共同研究のパートナー様を募集。
3.データの海を「広げる」ために
- データの海を広げ深めていくにあたり、カバレッジを拡大することでみなさまのESGモデリングや深い理解をご支援したい。
- カバレッジの拡大・進化においてご一緒いただけるパートナー様を広く募集。
- 例えば...アセットマネージャー様なら発行体向け送付質問票のDXでの協働、事業会社様なら社内で分散管理されているESG関連データの一元管理ダッシュボード構築で協業、など、
- サステナブル・ラボと一緒にデータの海を広げてくださるパートナー様を募っています。ご興味のある方はぜひお声がけください。
あとがき
ESG現場最前線を走る平瀬さんが語ることで、「やらなきゃいけないからESG対応をする」というこれまでのフェーズから「うわべだけのESGではなく本質から変わろうとしている」と参加された方々に感じていただくことが出来たのではないかと思います。今回のウェビナーなどを通して出会った新たな企業・団体様と、コラボレーションを通じて良い成果をどんど生みだしていきたいです。ご関心のある方はぜひお気軽にお問合せでください!